セイヨウオオマルハナバチ (Bombus terrestris)
セイヨウオオマルハナバチは北半球を中心に広範囲に分布し、ヨーロッパ・北アフリカ・中東・インド・ロシア・中国などで報告がありますが、南北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドには分布しません。
日本でも古い記載で北方領土の国後・択捉島などで報告されています。
カラーパターンの変異が大きく、類似のBombus lucorumと元になる標本(タイプ標本と言う)が混ざった歴史があり、現在も分類における混乱が見られます。
北海道に生息するノサップマルハナバチをBombus lucorumの亜種とする見解もあります。
分布域が広いため、地域によって発生時期が異なりますが、概ね春~夏にかけて冬眠から目覚めた女王蜂(創設女王蜂)が単独でネズミの巣などの空洞を利用して産卵します。
最初の働き蜂が羽化した後、創設女王蜂は産卵に専念し、働き蜂が巣から外に出て、花粉や蜜を集めるようになります。
9月上旬から雄蜂、その後大型の雌蜂(新女王蜂)を産出し、交尾を終えた新女王蜂のみが越冬し、他の働き蜂・雄蜂はすべて死亡し巣は終了します。
典型的な1年制の生活を送ります。
セイヨウオオマルハナバチは、当社によって、ベルギーから日本に最初に輸入されました。
その後、オランダ・フランス・スペイン・ニュージーランドなどで増殖が成功し、日本の商社を介して、複数の会社が販売を始めました。
同時に日本国内でもセイヨウオオマルハナバチを増殖しようという試みがなされ、現在は商品として流通しています。
セイヨウオオマルハナバチに関しては、当初から「ヨーロッパと北海道は環境が似ているから定着する可能性がある」ことが一部の研究者により指摘されてきたため、当社は北海道への販売を自粛してきました。
同時に、利用現場では「ハチの巣は活発に活動しているが、トマトにバイトマークが着かない」という問題が多発し、ハウス外への逃亡を防止するために、ハウスの開口部にネットの展張を推奨するなどの努力が続けられてきました。
環境省はセイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定し、飼養許可を取得することで施設栽培での利用継続を認めました。
法律に基づくネット展張などの逃亡防止の義務化は、逃亡した個体が環境をかく乱する可能性を抑制するだけでなく、ハウス内の植物にバイトマークを確実に付けるということも実現しました。
現在、本州ではセイヨウオオマルハナバチの新たな飼養許可は下りませんが、在来種で代替出来ない北海道では新規の飼養許可が出されています。